本 「マスメディアとは何か」 7/25

「マスメディアとは何か」 7/25

 

マスメディア研究の通史を、かなり一貫した流れと共に紹介してあって、かなり読みやすく、分かりやすく仕上がった良本。

メディア効果が強く評価された20.30年代からの時代から、50年代以降のメディアの効果を限定的に評価するトレンドになっていく。そして、さらに振り子は戻ってきて、アジェンダ設定など人々の認知に影響を及ぼすメディアの構造的影響力について評価されるようになる。そして、時代はネットメディアの時代になっていく。アジェンダ設定などのメディアの影響力を減少させる救世主の一面もあるが、現代につながるメディア不信やエコチェンバー効果など負の側面が強くなっていく。ネットは今までのメディアとは異質なものであると評価しつつ、筆者は、今までのメディア論で積み重ねられてきた研究や知見は、ネットにも多く使えることを指摘する。まさにそうで、重要な指摘だ。事実、エコーチェンバー効果はネットでさらに増大したが、それに類似したものは従来のメディア論でも研究されてきたことだ。

そして最後は、ネットメディアの負の側面が出てきた今、従来の(オールド)メディアへの期待も筆者は示す。両者が交じり合う形で、いい情報にみんながアクセスできること(偏った・一部の情報だけが手に届くのではく)が、民主主義のためには必要だと主張する。